STORY of PHONO PICKUP

カートリッジ

絶えず生の音楽の中に身を置き、自分の音楽を自ら録音し、レコードを製作し続けているグラド氏。氏がカートリッジの開発に情熱を傾けるわけ。

それは、レコードのミゾの中にどれだけの音楽情報が刻まれているかを熟知しているからです。レコードのミゾに入っている情報をあますことなく取り出せば、みんなが思っている以上の音楽の表情を楽しむことができると信じているのです。

グラド氏はいかにして針先がミゾの内部、360度全方向を正確にトレースさせるかという基本を研究し続けました。理屈は、簡単。実現は、困難。まずカンチレバ一の実効質量を少なくしなければなりません。グラド氏は、ステレオMCカートリッジを発明したときからコイルによる実効質量の低下を研究し続けていたのです。ハイエンドユーザーに人気を博したグラド・ラボシリーズ、モデルAなど比較的うまくいったかに思えました。それでもコイルが存在すれば、実効質量は存在する。一切の妥協を嫌うグラド氏は、カンチレバーにコイルを巻かなければ、上下左右360度、どの方向にも同じ条件でミゾをトレースできる、という結論に達しました。グラド氏は自ら発明したMC型の研究に終止符を打ったのです。1974年のことです。

360度の正確な動きができれば、レコードに刻まれた生の音楽のニュアンスが楽しめるのです。ホールの奥行きや左右の広がり、楽器や声の位置があいまいになってしまう原因のひとつは、カンチレバーの動きが正確でないためです。グラド氏の考えたFBカートリッジは、カンチレバーにコイルもマグネットもついていません。さらに針先が360度、どの方向に対しても、動きやすさが均一ですから針が感じた動きを歪ませることなく反応できます。そしてカンチレバーの支点が、ずれない所でささえてあります。さらにフラックスブリッジが円盤であるため、どの方向に対してもまったく同じ動き易さ(コンプライアンス)になっています。また針先のねじれをなくすために針先と重心と支点が直線上にあります。グラド氏は、MCカートリッジの動きの問題点を以上のことで解決しました。

PHONO PICKUPの内部構造

Reference 1 series & Statement 1 series

最強の天然木ジャラに包まれた「リファレンス&ステートメント・ワン・シリーズ」は、長年に渡って開発、生産続けられていたFB方式のネクストステップです。

グラドはステレオMC型フォノカートリッジの発明者(彼の特許はオルトフォン、デンオンをはじめほとんどのステレオMC型に及ぶ基本的なもの…ひとつのアーマチュアにL/R両チャンネルのコイルが巻かれている)でありながら、(1)実効質量の増大による過渡特性の劣化と(2)コイルが及ぼす動作支点への影響、そして(3)磁気回路内で発生する逆起電力によるダンピングの低下により、20年間に渡るステレオMC型フォノカートリッジの開発を止めてしまったのです。1974年のことです。それらの弱点を克服するために発明されたのがFB型でした。このじっくりと育ててきたFB型も、もうすでに四半世紀が過ぎようとしています。

徹底した無共振化

MC型の弱点を克服したFB型はその構造の副産物として、針交換も実現していました。しかし、この「リファレンス&ステートメント・ワン・シリーズ」はその接合部を敢えて接着することで、無共振化を徹底させ、より精密な音溝のピックアップに挑戦しています。さらに発電機構部を内部損失の優れたABS樹脂シャーシにエポキシ充填接着し、それを手作業にて丹念に削り出されたジャラ材ボディへマウントする手の込んだ三重構造が不快な共振音の発生を抑えるという徹底ぶりです。もちろん、このボディ形状は度重なる試聴と経験に基づいて決定されました。

MM型をはるかに凌ぎ、ほとんどのMC型をも越えるトップクラスの発電力効率("ortfon SPU"に匹敵)を誇るFB型のサウンドは、ピーキングのない素直な高域と重心が低くエネルギッシュな低域に支えられた厚みのある中域、そして高さや幅、奥行き方向への明確でスムーズな音像の移動と広大なサウンドステージが特徴です。

ご使用に際しては、水平、垂直方向のコンプライアンスが等しいミディアム・マスのトーンアームを推奨します。