設置ガイド

1.始めに

チューブトラップは、アクセサリーではなくコンポーネントです。コンポーネント間をより正確に接続するために、高性能ケーブルの使用は今や常識です。しかし、アーティストから始まるオーディオ・チェーンの最後の接続媒体は電線ではなく、スピーカーと耳の間にある空気です。どのように高性能なオーディオ・システムさえ、最終的には空気を介して聴取者の鼓膜に到達します。
空気自体は完全に直線的な伝達媒体なのですが、リスニング・ルームの壁、床、天井などの境界面では歪みや共鳴などの音響的フィードバックが起こります。そして、それは最近まで避け難いものとして我慢するしかなかったのです。
音楽の衝撃音は独立した複雑な音の破裂であり、それは音の出だしに於いて顕著であり、調性を強めたり弱めたりします。全ての音を構成している様々な周波数の位相周期やタイミングを、破裂音の出だしの経過音の中に容易に見つけることができます。音の破裂に伴う副次の経過音、即ち減衰はその楽器の調性を包括しています。楽器の様々な周波数は様々な割合で減衰していき、そして音が消えていくにつれ音色が推移していくことになるのです。音楽の素材はこれらの経過音のディティールに含まれています。
チューブトラップは、「貧弱な部屋の音響効果」によって引き起こされる最低域の経過音の問題をも解決します。始めの強い反射音の勢いを減らすことによって、音の出だしの時間的同期を図ります。そして、部屋の共鳴反応(Qファクター)も減らします。これは音楽的に減衰する経過音よりも優勢なルームカラーを取り去ってしまうという事です。
最も重要な事は、スピーカーからの低周波数の音波の強い反射波のほとんどがスピーカー背後のコーナーからのものだという事です。もうひとつのコーナーからの反射は壁の前にあるふたつのスピーカーの真ん中に発生します。このような高圧の場所に置いたチューブトラップは、初期の強い反射波列(これは直接波列を歪めたりする)を減衰させます。
楽音の減衰する経過音はリスニング・ルームの強くて長い減衰率には影響されずに、最も悪いことには部屋の共鳴状態に関係があるのです。リスニング・ルームの音響的共鳴は楽音の中の音楽的減衰よりも明白であり、多くの細かな情報は失われてしまうのです。これらのコーナーにチューブトラップを置けば部屋の共鳴感を弱め、楽音の減衰する経過音を聴いたり理解することができます。
幸運なことに、コーナーにチューブトラップを置けば個々の音の破裂感のある音の出だし、色彩感と曖昧さのある減衰等の経過音の聴覚的ディテールが保たれます。このように最初に部屋の音響的歪みをコントロールしておけば、あとはチューブトラップを適宜追加していくことによってリスニング・フィールドを少しずつ発展させることができます。


 

2.チューブトラップ設置について

最初の目標はリスニング・ルームの低い周波数の響きを抑制するとともに、初期の反射を減らすことです。一般的にこれはスピーカーに最も近いコーナーにチューブトラップを置くことを意

味します。このような反射波が抑制されていなければ、聴覚的カラーレーションや歪みを音響信号に与えることになり、しかもそれはイクォライザーでコントロールできないのです。
一般的なダイナミック型スピーカーを使用している天井の高さが2.4メートル程度の長方形の部屋では、主に70ヘルツ辺りに問題があります。床と天井の間の共鳴は容易に起こりますし、そして倍音である140ヘルツについても同様のことが言えます。このようにして低音がブーミーになってしまうわけですが、これはスピーカーの背後の各コーナーに1組のチューブトラップを置けば抑制できるのです。
少なくとも、部屋の容積28立方メートル毎(標準的な8畳間)に1本または2本のチューブトラップが必要です。基本的には部屋の各角にチューブトラップが妥当です。特に強調しておきたい事は、チューブトラップは部屋のコーナーに置いたときに吸音効率が最大になるということです。また、平面型スピーカーの場合、一般に壁から60〜90センチメートル離すように薦められていますが、チューブトラップを一緒に設置すれば壁から30〜45センチメートルのところに置くことができます。
チューブトラップの周囲の半面はリップ・マス反射膜で覆われており、400ヘルツ以上の周波数の吸音量をコントロールできます。チューブを覆っている布地の縫い目(縫い目の反対側には金属ボタンが付いています)は、広帯域の吸音面の中心を示しています。もし、ブライトな音響環境を望まれるなら、縫い目をコーナーに向けて、また、ブライト過ぎる場合は、縫い目をスピーカーの方へ向けて置きます。
チューブトラップでリスニング・ルームの音響環境を改善していくことができます。チューブトラップを部屋の音の吹き溜まり仕掛ければ、以前にも増してより良い鮮明さとイメージ、さらに強烈で深い最低域を持った澄んだダイナミックな低音を再現します。あなたのオーディオ・システムは潜在能力を有しており、チューブトラップはその潜在能力を引き出す手段を提供するものです。あなたがその効果を確かめるには、実際に聴いていただかなければなりません。そうすれば満足していただけるものと確信しております。


 

3.性能

下記の測定グラフは1/3オクターブの帯域制限をしたピンク・ノイズを使って、各中心周波数に於ける8個のサンプルの平均値です。測定にはB&K 4165マイクロフォンとB&K 2309サウンド・レヴェル・メーターとB&K チャート・レコーダーを使いライヴな環境のコーナーに設置して行ったものです。

グラフから11×1(直径11インチ=28cm、長さ1フィート=30cm)のチューブトラップは100ヘルツに対して約2.7セービンズの吸音能力を有することが分かります。これは11×4のチューブトラップ(T114)1本でLPジャケット約11枚分もの無反射面を作ることが出来るという事です。
もうひとつチューブトラップの優れた吸音能力を具体的に示しましょう。例えばグラスウールで40ヘルツに対する1セービンの吸音体を作るにはLPジャケット1枚分の開口面積(0.09M2)で深さ2メートル(1/4波長)の穴(体積:0.18M3)にグラスウールを充填しなければなりません。16×1のチューブトラップ(体積:0.038M3)の40ヘルツに対するセービンズは2.3ですから、体積比で約11分の1の大きさで済むことになります。
あなたは40ヘルツの定在波を吸音するために、深さ2メートルの穴を空け、そこにグラスウールを詰め込みますか?

 

セービンズ(Sabines)について

グラフの横軸は周波数を示し、縦軸の単位がセービンズを示します。このセービンズとは従来の吸音率といったものと異なり、その独立した個々の吸音能力を表す単位で、現代音響工学の基礎を確立したセービン博士が定義したものです。セービンズにはメートル法によるものとヤード・ポンド法とがあり、ASCではヤード・ポンド法による表示を採用しています。セービンズは吸音によって出来た全く反射のない面積を表し、1セービンとは、1平方フィート(LPジャケットの大きさ)の全く反射のない面積になります。


 

4.最後に

家庭におけるリスニング・ルームの目的は、記録されている音楽を録音された現場の雰囲気のままに再現することと思います。録音された現場とは大ホール、小ホール、チャペル、スタジオなど色々あります。大ホールでもバイロイト祝祭劇場とカーネギー・ホールの違いが再現できなければ目的は達成できないことになりますし、チャペルとスタジオ録音の区別ができなければ話にならないでしょう。先ず、ホーム・ミュージック・システムの理想を目指すのであれば、部屋固有の癖を取り除き録音に対しての順応性を高めることが大切です。
室内に限らず壁と壁が存在する所には必ず定在波が発生します。定在波の基音周波数は壁と壁(天井と床)の距離の1/2波長で発生します。例えば、6畳間で発生する定在波の基音周波数を計算してみましょう。6畳の京間の横幅は約2.4メートルです。音速を340メートルとして1/2波長が2.4メートルの周波数は約70ヘルツ〔340÷(2×2.4)=70〕となります。同様に奥行きは3.6メートルですから約50ヘルツ。一般的な天井の高さは約2.4メートルですから、ここでも約70ヘルツの定在波が発生することになります。この定在波の周波数は基音だけですから、実際にはこの高調波も発生します。
対するコンサートホールは天井の高さだけでも20メートル程有り、その定在波の基音周波数は10ヘルツ以下の可聴帯域外で音楽に悪影響を与えません。50ヘルツや70ヘルツの定在波はその高調波も含めると見事に悪影響を及ぼしてしまいます。この問題を解決しなければ、家庭にて本物のコンサート・ホールやチャペルの雰囲気を味わうことは無理でしょう。そして、この問題はイクォライザーなど電気的な手段では決して回避できないことを理解しなければなりません。 次に、定在波の発生に相当配慮をしたリスニング・ルームでも、音響特性を測定してみると低音域の異常な上昇が見られます。それは、そのような部屋が遮音にも相当配慮をしており低音の逃げ場がないのです。スタジオ等は遮音と定在波の抑制はもちろんのこと低域の吸音についても相当な配慮を行っています。しかし、この低域の吸音を行うために2メートル以上の厚さの吸音材を使用しており、これは一般家庭においては実現不可能なものです。
単に定在波の抑制と吸音に努めただけでは野原にスピーカーを置くようなもので、クリーンなステレオ・イメージは得られるでしょうが美しい音響的アンビエンスは得られません。我々の耳が残響として区別出来るような時間差の大きな反響は必要です。チューブトラップは定在波を抑制し楽音のアタックや減衰の経過音や定位など曇らせる一次反射を効果的に抑えながら、心地好い残響までをも奪うことはしないのです。
耳が方向を感じるのは音量差と時間差によるものとがあります。一般的に認知されている実験データとして、ふたつの音源に15デシベル以上の音量差(左右の位相は揃っているとして)がある場合は方向感は音量の大きな方へ完全に偏っていると感じ、ふたつの音源に1ミリ秒以上の時間差(音量は全く揃っている、位相差:距離にして35センチメートル)がある場合は方向感は先に到達した方へ完全に偏っていると感じます。また、時間差が30ミリ秒(距離にして10メートル)以上あるとふたつの音源は独立したものと感じられます。つまり、1〜30ミリ秒の時間差があるときのみ定位に影響を与えるとされています。これが『ハース効果』で、音響理論として広く認知され利用されています。
しかし、15デシベル以上の音量差、言い換えるとチャンネル・セパレーションが15デシベルのシステムはゼネラル・オーディオの世界です。ハイエンドでは少なくともこの100倍以上の精度を要求しています。同じように、時間差についても1〜30ミリ秒の範囲外にも配慮が必要でしょう。
チューブトラップ最大の特徴は低域の吸音能力です。それも特定の周波数のみを吸音するのではなく、幅広い周波数を強力に吸音します。このチューブトラップの強力な吸音特性は音圧により動作しますので、部屋の中で最も音圧の高くなる床と壁からなる3面のコーナーに設置することにより最も発揮されます。3面のコーナーに比べ2面のコーナーに設置した場合は低域に対する吸音能力は22パーセント減少します。
チューブトラップの第2の特徴は中高域に対する吸収量の連続可変です。中高音に対して半面が吸収、そして片側半面が反射するようになっており、吸音・反射量の連続的な調整ができます。これにより、厚手のカーペットの敷き詰めた中高音域に対してデッドな部屋も、全面板貼りのライヴな部屋でも部屋の音響特性を平坦に近づけることができます。
「サウンドパネル」は190ヘルツ以上に対して吸音効果があります。その吸音特性は平坦で、数多く設置するほどに部屋の音響特性は平坦に近づきます。側面が吸音となっており、スピーカーなどの一次反射のように斜方からの音を効率良く吸音します。中央部は反射帯で部屋そのもののアンビエンスを損ないません。また、「サウンドパネル」は軽量なため壁面だけではなく、天井へ取り付けることにより、床と間で発生するのフラッター・エコーを除去することもできるため大変有効的な方法です。


僕の部屋は悪くない一時反射が定位を乱しますライヴ&デッド最後は空気です設置ガイド外装布地・色見本